【立ち退き】【店舗】【携帯ショップ】突然、建物の老朽化を理由に貸主より賃貸借契約の解約申入れを受けたが、移転費用や逸失利益を算定し、立退料として約2300万円を獲得して、立ち退きに合意した事例

1.相談者の性別、年代、ご要望等

  • 対象物件:名古屋市内中心部の貸店舗
  • 借主/法人
  • 貸主/不動産会社
  • 相談者様は、対象物件において携帯電話の販売店を営んでいる法人の代表者
  • 立ち退きに応じるのであれば、移転費用や移転先での経営が軌道に乗るまでの補償はしてもらいたい

2.ご相談内容

借主である相談者様は、中国出身ですが日本暮らしの方が長く、日本語も堪能であり、10年ほど前に対象物件の賃貸借契約を締結し、これまで携帯電話の販売店を順調に経営されていらっしゃいました。

相談者様が賃貸借契約を締結した当時は、家主が個人の方でしたが、途中で貸主がデベロッパー(不動産開発会社)に変更になったとの連絡を受けました。

貸主が変更になって1年ほどが経過したころ、貸主の代理人である弁護士より賃貸借契約の解約申入れ(対象物件からの立ち退き要求)があり、突然の通知に驚いた相談者様は、今後どう対応すべきなのか不安になり、インターネットで検索したところ、三輪知雄法律事務所のホームページを見つけ、電話で連絡したところ、希望の日時に相談の予約が取れたことから初回無料相談にご来所されました。

3.法律相談後の経過

(1)初回無料相談・・・解約申し入れに正当な理由があるかどうか・・・

初回無料相談では、相談者様が賃貸借契約を締結している物件の状況について、写真や建物の全部事項証明を参照して築年数を確認するとともに詳しく話を伺いました。

一般論として、賃貸借契約においては、貸主や家主から立ち退き請求を受けても、「正当な理由」がない限り、立ち退きに応じる必要はありません。
賃貸借契約において、無断転貸や数ヶ月以上の家賃滞納の事由がない限り、法律上、借主は保護されています。
貸主の側から契約を解約をするには、貸主が居住するために当該不動産を使用するとか、建物の老朽化により建物が危険な状態になっているなど「正当な理由」が必要とされています。

話を伺った結果、かなり古い物件ではありましたが、相談者様においても、店舗の改装工事を実施し、設備をリニューアルしている部分もあり、使用に支障はないように思われました。
また、今回、家主側が契約を解約し、立ち退きを求めた理由としては、従来のビルを解体した後、高層マンションを建設し、新たな収益物件として賃料収入を得ようという狙いがあるとのことでした。

以上をふまえますと、本件で申し入れられた賃貸借契約の解約については、主に大家側の利益追求的な要素が強いと考えられることから、「正当な理由」の有無については消極的に判断されると思われます。

(2)立ち退きに伴う損失の調査

その後、本件で立ち退きを受け入れた場合、店舗の場所が変わることにより、相談者様にとってどんな不利益が考えられるのか、相談者様が携帯電話販売の事業を開始された当時の賃貸借契約のことから、立ち退き請求がなされるまでの経緯について詳しく話を伺いました。

もともと店舗が所在する場所の近隣には大学や専門学校等が複数あり、相談者様の会社の客層としても、学生が5割を占めている状況でした。
また、相談者様自身も店舗スタッフの方も外国語を話すことができるため、そういった評判が広がり、顧客の8割は学生も含め外国人のお客様であったということです。

店舗を移転することになれば、場所にもよりますが、顧客離れや会社に通えない従業員が出てくることも想定されます。
また、移転先での営業を開始するために、新たに設備を整えたり、近隣への宣伝も必要となるでしょう。
以上をふまえ、貸主である相手方への請求項目について、以下の点を中心に検討を行いました。

1:新店舗への移転費用(引っ越し費用、登記費用、印鑑作成費用等)

2:新店舗における設備工事などの造作費用

3:広告宣伝費用

4:移転先物件に関する費用(賃料差額、保証金、仲介手数料など)

5:店舗移転に伴う逸失利益

相談者様は、もうしばらく相手方の様子を見てから当事務所へ委任するか考えたいとのことで、初回相談は終了しました。

(3)委任契約の締結、受任通知の発送

初回相談から2ヶ月が経過したころ、相手方との話に進展があったとのことで、相談者様から担当弁護士宛に連絡がありました。
2回目の面談では、初回相談以降の関係資料を持参していただき、その後の経緯と相談者様の意向を伺いました。

相談者様は、相手方から立ち退き要求があった以上、十分な補償をしてもらえるのであれば店舗移転をすることも検討せざるを得ないと考えており、相手方に対する請求を三輪知雄法律事務所へ依頼されたいとの意向でしたので、委任状及委任契約書取り交わしました

委任状を取り交わしたため、今後は弁護士が窓口となり、相手方と交渉を行うことが可能となります。

まずは相手方の代理人弁護士に対し、今後の交渉の窓口は担当弁護士となる旨の受任通知を発送いたしました。

(4)損害額の算定

立ち退きをすることにより発生する損害額の検討、算定を行いました。(請求内容については「(2)立ち退きに伴う損失の調査」に記載のとおり。)

1~4については、相談者様において移転先候補となる物件を探してもらい、各費用について業者に見積り依頼をしていただくようお願いいたしました。
5の店舗移転に伴う逸失利益については、担当弁護士において算定を行いました。

移転先での営業を開始するための準備期間については、もちろん通常のように営業をすることはできません。また、近隣には同条件の賃借物件がないため、かなり離れた場所に移転しての営業再開となり、もともとの顧客を失うと考えられることから、一定期間、収益の減少が想定されます。

立ち退く必要がなければ、本来得られたはずの利益(逸失利益)については、立ち退きを要求された相談者様にとっては当然主張したいというお考えであり、担当弁護士において、資料と共に算定を行い、相手方へ請求しました。

(5)相手方への請求・交渉

担当弁護士において損害額の算定を行い、相手方への請求を行いました。
こちらからの請求に対し、相手方の回答としては、広告宣伝費用など金額を認めるものもありましたが、一部の費用に関しては請求を認めないという主張であり、立退料として、当方の請求の半分程度の金額を提示してきました。

しかし、この相手方提示の立退料は、移転について多大なコストを負うことになる相談者様にとっては、到底受け入れられるものではありませんでした。
以下では、主張の相違があった費用について、当方と相手方の主張を比較して記載します。

当方の主張相手方の主張
造作費用内装工事にかかる費用を見積書をもとに全額を請求。内装工事費用は店舗移転により必要となる費用であることは認めるも、内装が新しくなることは当方においても利益が生じるため、全額の支払いは認められない。
移転先物件に関する費用移転前後で発生する賃料差額について、一定の期間で請求。当方の請求した金額のうち、一定の範囲のみ支払を認める。
店舗移転に伴う逸失利益①退去から移転先物件の工事完了までに1ヶ月間を要するため、決算資料から算定した金額(1ヶ月分)をその間の休業補償として請求。補償は不要であり、認められない。
店舗移転に伴う逸失利益②店舗移転に伴い得意先が喪失し、収益も減少することが想定される。
そのため、移転から最初の1年目について、決算資料から算定した金額(1年分)について一定の割合を、2年目も一定の割合にて損害額を算定し請求。
当方の請求金額のうち、一定の範囲のみ支払を認める。

(6)合意書の作成及び合意成立

最終的には、弁護士による相手方への請求・粘り強い交渉の結果、当初の相手方提示の金額から大幅な引き上げに成功し、立退料として約2300万円の支払を受けることで合意が成立しました。

そこで、担当弁護士において合意書案を作成し、相手方の代理人弁護士との間で建物の明け渡し日(退去日)はいつにするのか、立退料の支払方法や時期はいつにするのか等、合意書の詳細な内容を確定していきました。

最終的な合意書については、文案を相談者様にも確認していただき、内容について問題がないとのことでしたので、代理人である担当弁護士において署名捺印を行い合意書の取り交わし完了いたしました。

(7)建物明け渡し、立退料受領

店舗明け渡し日までに退去が完了できるよう、相談者様において作業を進めていただきました。
店舗の明け渡し当日には、担当弁護士が立ち会いのもと、双方において店舗内の状況確認を行い、店舗内の状況に問題はなかったため、その場で鍵を返却し、店舗の明け渡しは完了しました。

立退料については、明け渡し日の翌日に担当弁護士の預り金の管理口座への着金を確認しましたので、速やかに相談者様へお支払することができ、本件は無事に解決となりました。

立ち退き要求を受けた当初は不安でいっぱいだった相談者様も、十分な補償(立退料)を受けることができ、大変喜ばれていました。

また、本件が解決するころには、移転先での営業開始に向けて前向きな気持ちになっていました。

現在では、移転先の携帯ショップの経営も軌道に乗り、順調に売上を伸ばしているそうです。

4.解決までに要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用

三輪知雄法律事務所が解決までに要した期間と弁護士費用は以下のとおりとなります。

解決までに要した期間と弁護士費用

  • ご相談から解決までの期間:1年4ヶ月程度
  • 三輪知雄法律事務所の弁護士費用

  ・ 着手金:22万円(消費税込)

  ・ 報酬金:相手方から獲得した金額(経済的利益)の16%相当額(消費税込)

※実費、日当等は別途。
※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、個別の案件やご相談内容によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

5.三輪知雄法律事務所の担当弁護士からのコメント

三輪知雄法律事務所

担当弁護士:三輪 知雄

出身地:名古屋市。出身大学:京都大学法科大学院。主な取扱い分野は、立ち退き等不動産事件、企業法務、相続事件。

突然、貸主から建物からの立ち退きを要求されたらどう対処すれば良いのか先のことを考えて不安になると思います。

また、今回の相談者様のように長年同じ地域で事業をされており、客層にもその地域の特性が顕著に現れるような場合、営業場所を変えることには大きな抵抗感もあり、尚更不安に思われることと思います。

建物の老朽化が理由で立ち退きを要求されたからといって、すぐに受け入れる必要はありません

店舗移転による収益の減少は、借主にとっても暮らしに直結することですので、引っ越し費用などの移転に関わる費用だけでなく、逸失利益についてもきちんと算定し、正当な金額を立退料として貸主に対して請求することをお勧めします

そのためには、まず弁護士などの専門家に相談しましょう。

三輪知雄法律事務所では、立ち退きを要求された借主側の対応経験も豊富にありますので、お困りの方は気軽にお電話またはメールフォームよりお問い合わせください。

6.三輪知雄法律事務所の立退料請求の対応に強い弁護士へのお問い合わせ

三輪知雄法律事務所の「立退料請求の対応に強い弁護士」へのお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間・平日 9:00~18:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

※この記事は公開日時点の法律をもとに作成しています。
※争点等を理解しやすくするため、結論に影響がない範囲で事案の一部を簡略化して記載している場合があります。