【親族が代表を務める法人との使用貸借契約の解除】【信頼関係破壊】【セカンドオピニオン】前任弁護士から引き継いで、法人を相手に建物収去・土地明渡請求訴訟を行った結果、信頼関係の破壊を理由に法人との使用貸借契約の終了が認められた事例

1.相談者の性別、年代、ご要望等

  • 相談者様:50代女性。本件土地及び建物を亡くなった父から相続し、所有者となった。
  • 相手方:法人(仮に「A社」といいます)。代表者は、事業継承により代表者となった創業者の子であり、相談者様のいとこ。
  • 本件土地:本件土地上には、A社の工場及び倉庫が建っている。
  • 本件建物:相談者様が所有する物件。株式会社Aの事務所として利用。
  • 使用貸借契約を解除し、工場を収去し、土地と建物の明け渡しを請求してもらいたい。
  • 前任弁護士に依頼し裁判中であったところ、主張の方向性に相違が生じるようになり、三輪知雄法律事務所にセカンドオピニオンを依頼。

2.ご相談内容

相手方(A社)は、産業用ロボット部品のプレス工場を営んでいる会社です。
もともと相談者様のお父様とその弟によって創業され、50年近く営業を続けていました。

相談者様は、10年前にお父様を亡くされ、その相続で本件土地と建物を所有することになり、当初は、相談者様も相手方で経理担当として事業に従事していましたが、お父様が亡くなったことをきっかけに経理担当から離れることとなりました。

創業者の一人である相談者様のお父様は既に亡くなっているため、土地の利用を開始した当時のことは不明ということでしたが、賃料として金銭が支払われたことは一度もなく、お父様に支払われていた給料の一部が賃料代わりになっていたようでした。
そのため、お父様が亡くなってからは、相手方によるお父様への給料の支払は無くなり、当然、賃料の支払いもされなくなってしまいました

本件建物の電気代及び水道代については、相手方代表者との間で1年間でまとめて1万円を支払うという口頭の約束があったようですが、書面にされたものはなく、ほとんど支払がなされないまま、相談者様が負担をしていたとのことです。

本件土地や建物の固定資産税については、相手方が負担していた事実もありましたが、本件に関する協議が頓挫して以降は、相手方による支払いが行われなくなってしまったため、相談者様において負担を余儀なくされていました。

また、相談者様はお父様から相手方の株式を相続していたため、株主総会へ出席する権限も有していましたが、記憶の限りでは株主総会が開かれたことはなく、相談者様の知らぬ間に会社の登記がなされていた形跡もあったとのことです。

さらに、相手方は夜間に操業をしていたことから、騒音被害について近隣住民から苦情が寄せられるなど、相談者様も長期間にわたり対応に困っていらっしゃいました。

以上の理由により、相手方に対して使用貸借の終了を求め、ある弁護士に依頼して訴訟をしていたとのことですが、裁判が進む中で主張の方向性の相違が生じるようになり、セカンドオピニオンを求め、新たに弁護士を探していたところ、三輪知雄法律事務所のホームページを見つけ、実際に電話をしてみたところ、希望日に予約が取れたため、初回相談にいらっしゃいました。

3.法律相談後の経過

(1)初回相談&セカンドオピニオンの実施

初回相談では、これまでの相手方との交渉に関する資料や訴状など裁判に関係する資料をご持参いただき、前任弁護士により訴訟提起に至るまでの経緯やこれまでに行われた裁判の経過について詳しく伺いました。
裁判の資料も量がありましたので、いったんお預りの上、有料相談とさせて頂くこととし、その旨、相談者様からご了解を得て、別日に改めて回答をさせて頂くこととなりました。

別日に改めて、セカンドオピニオンとして、本件についての対応方針、見通し、弁護士費用等についてご説明したところ、相談者様から、使用貸借に関するトラブルの解決実績がある三輪知雄法律事務所に依頼したいとのことでした。相談者様において、前任の弁護士との委任契約を解約の上、当事務所と委任状及び委任契約書の取り交わしを行うことになりました。

(2)前任の弁護士からの裁判資料の引き継ぎ、担当弁護士による現地確認等

前任の弁護士から裁判資料の引き継ぎを受け、裁判所へ委任状を提出し、新たに代理人となったことを通知しました。

そして、本件においては、訴訟が進行していたこともあり、裁判官に対して説得的な主張を展開するには、写真だけではなく、弁護士において本件土地や建物などを直接確認することが必要と考えられました。そのため、受任後直ちに、相談者様とともに弁護士が現地確認を実施し、証拠資料として提出するために写真・動画の撮影や、操業音の確認等を致しております。

4.今回の事案の争点及び当方の主張 ~法人(会社)に対する使用貸借~

本件土地の使用貸借契約は、土地のもともとの所有者であった相談者様のお父様と相手方である会社との間で成立しており、相続により、契約上の地位を承継することとなった相談者様が相手方に対して本件建物の収去及び土地の明け渡しを求めました

今回の事案では、使用貸借の目的の終了及び相手方との信頼関係の破壊を理由とした使用貸借契約の終了が認められるかが争点となりました。
当方の主張の具体的な内容については、下記のとおりです。

(1)法人(会社)に対する使用貸借・・・使用貸借の目的の終了の有無

本件土地の使用貸借契約は、土地のもともとの所有者であった相談者様のお父様とその弟(個人)ではなく、相手方である法人・会社との間で成立しており、その会社が事業を継続している点に特徴があります。

そのため、使用貸借としては、本件土地が、相手方の工場や敷地としての使用ということだけではなく、相手方が本件土地上で産業用ロボット部品のプレス工場を経営していることによって創業者の両名(またはその相続人)が恩恵を受けることが本件土地の使用貸借の目的の基礎となっており、それが終了していると認められるか否か、についても争点となりました。

(2)信頼関係の破壊による解除の可否

下記2点を理由に、信頼関係破壊による解除が認められるか否か。

・長期間にわたる賃料や固定資産税等の不負担
創業者であるお父様の給料に賃料が含まれていたとして、お父様の死亡以降の支払がされなくなったこと。
本件土地や本件建物の固定資産税、電気代及び水道代を相談者様が負担していること。

・株主総会の開催や実施に関する手続違反の可能性
株主である相談者様の記憶の限りでは株主総会が開かれたことはなく、相談者様の心あたりのない会社に関する登記も見受けられたこと。

5.訴訟対応から判決まで

(1)訴訟対応

以上をふまえ、数回にわたる裁判期日において、当方からは、使用貸借の継続が相談者様に負担しかなく、終了が相当である根拠や関連する事情等を主張し、それらを基礎づけるべく現地確認で得た証拠等を提出しました。
その後、裁判所において、原告側(相談者様)と被告側(相手方)の証人尋問が行われました。

判決に至るまでに裁判所が主導する和解が試みられ、ギリギリまで和解協議を進めていましたが、双方が納得のいく和解は整うことはなく、最終的には裁判所から判決が下されることとなりました。

(2)裁判所の判決

本件土地の使用貸借の目的については、訴訟中も相手方(被告)が本件土地上にてプレス加工業を営んでいることから、目的に従った使用収益は終了していないとの判断でした。

しかし、本件土地の使用貸借については、「創業者の両名(またはその相続人)が相手方(被告)の経営によって恩恵を受けること」が基礎となっていた等と認定しました。また、創業者の相続人のうちの一人であり、A社の株主でもある相談者様(原告)のあずかり知らない会社の登記があることやその他の事情をふまえると、使用貸借の目的の基礎が失われていると判断しました。

そして、本件土地の固定資産税、本件建物の電気代及び水道代を相談者様が負担していること長期間にわたり賃料の未払問題等が解消していないことについても、信頼関係の破壊について積極的に解すべき事情として考慮すべきと判断しました。

よって、相談者様(原告)と相手方(被告)の信頼関係は破壊されているから、改正前民法597条2項の類推により使用貸借契約の終了を認め、相手方(被告)に対し、本件建物を収去し、本件土地を明け渡すよう判決が出されました

改訂前民法597条2項(現598条1項)

当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。

6.解決までに要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用の目安

三輪知雄法律事務所が解決までに要した期間と弁護士費用は以下のとおりとなります。

解決までに要した期間と弁護士費用

●ご相談から解決までの期間:約1年半程度

●三輪知雄法律事務所の弁護士費用

 ・初回相談料:1万1000円(消費税込) ∵前任弁護士のセカンドオピニオンのため有料相談。
 ・着手金:55万円(消費税込)
 ・報酬:経済的利益の11%+19万8000円(消費税込)

※実費、日当等は別途。
※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、個別の案件やご相談内容によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

7.三輪知雄法律事務所の担当弁護士からのコメント

三輪知雄法律事務所

担当弁護士:三輪 知雄

出身地:名古屋市。出身大学:京都大学法科大学院。主な取扱い分野は、立ち退き、使用貸借など不動産事件、相続事件、企業法務。

事業継続中の法人との使用貸借の終了が認められた事例です

親族間における使用貸借は、親など貸主の健康状態の変化や死亡、親族関係の悪化などをきっかけに、契約終了をめぐって争いになる事例が少なくありません。
しかし、使用貸借は、親族間での無償での貸借というケースが圧倒的であり、契約書等を取り交わしている事例はほとんどありません。
既に使用貸借中の不動産については、たとえ親族間での不動産の貸し借りであっても、契約終了時期を明確にするなど、賃貸借や使用貸借の契約書を締結することをご検討ください。将来起こりうるトラブルを未然に防ぐことが可能となります。

また、今回のご相談案件は、親族間の使用貸借ではありますが、土地上に借主である会社が建てた工場があり、借主が事業継続中の法人(会社)という点に特徴があります。
事業継続中の法人に対し、使用貸借契約解除を求めた裁判例は多くなく、適切な解決には、不動産問題に加えて、相続等の親族間紛争や企業法務に関する知識も必要になると思われるところ、当事務所では、相続案件や企業法務案件も常時取り扱っているため、借主が法人(会社)の場合でも、使用貸借に関するトラブルや裁判への対応することができます

本件では、借主が事業継続中の法人(会社)ではありましたが、裁判所は、判決において使用貸借契約の終了及び不動産の明け渡し請求を認めました。
この結果については、当事務所として、これまでの経験等をふまえ、多角的な観点から主張立証を行ったことが結果に寄与したものと受け止めております。

相続、使用貸借の終了、明渡請求が絡み合った複雑な案件や、既に弁護士に依頼した案件のセカンドオピニオンについてもご相談に応じていますので、お困りの方は、ぜひ一度、当事務所の法律相談をご利用ください。

8.三輪知雄法律事務所の親族間の使用貸借、契約解除、明け渡し請求の対応に強い弁護士へのお問い合わせ

三輪知雄法律事務所の「不動産に関する親族間の使用貸借の契約解除、明け渡し請求の対応に強い弁護士」へのお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間・平日 9:00~18:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

※この記事は公開日時点の法律をもとに作成しています。
※争点等を理解しやすくするため、結論に影響がない範囲で事案の一部を簡略化して記載している場合があります。