【不動産売買契約の解除】【確定測量図の不交付】【違約金請求】手付金を支払後、土地の境界確定測量図の不交付を理由に契約を解除し、売主側に手付金及び違約金の支払を求め提訴し、全面勝訴判決により違約金等の支払を受けた事例
1.相談者様の性別、年代、ご要望等
- 相談者様:40代男性。介護事業を営む会社の社長。
- 相手方:愛知県内の土地の地主。
- 相談者様と相手方との間で不動産売買契約が成立し、相手方に対して手付金を支払済み。その後、隣地権者が相手方の対応を理由に境界確定に応じず、期限までに本件土地の引き渡しがされなかったため、手付金の返金及び違約金の支払について相手方に請求したい。
2.ご相談内容
相談者様は、介護事業を営む会社の社長で、愛知県内に新たに介護施設を開設するため、その建設地として、相手方が地主である土地の購入を計画し、相談者様と相手方との間で本件土地に関する売買契約が成立(確定測量図交付の条件付き)後、相手方に数百万円の手付金を支払っていました。
しかし、相手方は、契約書に記載のある引渡期限までに本件土地の確定測量図を交付せず、相談者様に対して、無条件での白紙解約を申し出てきたというのです。
相談者様としては、売買代金を支払う準備もでき、融資関係や人材の採用も済ませており、これから事業に向けて動き出そうとしているところに出鼻をくじかれる思いで非常に落胆されていました。
相談者様は、約束を反故にした相手方とはもう不動産取引はしたくないが、相手方へ支払った手付金の返金と、売買契約締結から購入実現まで様々な時間と労力を費やしてきたことから、違約金を相手方へ請求したいというお気持ちでいらっしゃいました。
そこで、相談者様は不動産契約に関するトラブルについて経験がある弁護士を探していたところ、三輪知雄法律事務所のホームページを見つけ、電話で問い合わせをしていただきました。
3.初回無料相談
初回相談では、本件に関する資料一式(売買契約書、相手方とのFAX、文書のやり取り等)を持参いただき、不動産売買契約の締結から、測量士、隣地権者、不動産業者など関係者との交渉経過などを詳しく伺いました。
初回相談終了後、委任契約書の書式と要する費用についてご説明したところ、委任されたいとのことでしたので、委任契約書の取り交わしを行いました。
4.法律相談後の経過(催告書の送付)
相手方に対して、内容証明郵便にて催告書を送付しました。
催告書には、「当方が代理人として交渉窓口を務めること」、「既に引渡期限を徒過していることから、一定の期限内に確定測量図の交付、本件不動産の引渡等を行うこと」等を記載したところ、相手方からは、当方の主張は全て認められないものであり、対応できないとの回答がありました。
相談者様に報告したところ、本件不動産の購入実現に向けなんとか歩み寄ろうと努力をしてきた相談者様にとっては、相手方の回答は誠実さが欠けると感じられ、訴訟に移行することを決断されました。
5.裁判所への訴訟提起から判決確定まで
以下は、訴訟提起後の経過となります。
(1)争点・双方の主張
◆争点
相手方が本件土地の引渡日までに確定測量図の交付及び境界の明示をしなかったことが、相手方の責めに帰することができない事由によるものであるか否か。
◆当方の主張(原告)
隣地権者と被告との売買交渉において、隣地権者が手付金を交付するなど不動産購入に対する期待を高めていたにもかかわらず、被告によって破談にされ、境界立会に協力しないという結果を招致したことについては、手付金を受領した不動産業者に被告が一定の権限を与えていたこと等をふまえれば、被告の責めに帰すべき事由によるというべきである。
従前の相手方との交渉の経緯や原告による購入実現のための提案内容等をふまえると、確定測量図が交付されない(隣地との境界が不明確である)ことは、土地の価値を下げかねないものであり、違約金請求の対象となること、相手方が引渡期日までに、確定測量図の交付及び境界の明示をしなかったことは、相手方の責めに帰すべき事由によるものである。
◆相手方の主張(被告)
本件土地の隣地所有者が境界確定に同意しなかったために確定測量図を作成することができなかったことについては、あくまで同氏が非協力的であることが原因であるため、被告自身には責任はなく、違約金を支払う必要はない。被告は、隣地権者に対して交渉を担当した不動産業者に媒介についての依頼を正式には行っておらず、不動産業者が独断で行った交渉から生じた隣地権者の不協力や境界確定等ができなかったことについては、被告の帰責事由によるものではない。
(2)裁判所の判断
数回の裁判期日を経て、原告、被告の本人尋問等が実施され、裁判所は、判決において、当方の主張を全面的に認めました。
◆判決における裁判所の主な認定事項
・土地の売買に関して境界が確定しているかどうかは、購入後の土地の利用に際し、重要な要素となる場合があり、隣地との境界が不明確であることは土地の減価要因となり得る事情であること。
・隣地との境界が不明確でることが減価要因となり得ることをふまえ、原告が確定測量図の交付を希望しており、契約条項として定められた以上は、被告による確定測量図の不交付が契約解除ないし違約金請求の前提として規定されている債務不履行に該当すること。
・被告側が、隣地権者に対し適切な説明や対応等を行ったにもかかわらず、隣地権者が境界立会について協力しない態度に固執するなどしたとすれば、被告の責めに帰することができない事由によると評価できる余地もあるが、本件では、隣地権者が境界確定の立会を拒否していることが判明した後の被告の言動や原告との交渉経過等(当時、仲介に関与していた不動産業者の責任であると主張し、原告からの提案に対する回答や新たな対案すら提示しない被告の態度)からしても、隣地権者による個人的な事情による境界立会拒否であるとはいえない。
(3)判決確定
裁判所から判決が出され、相手方からは控訴はなく、判決は確定しました。
相手方からは、手付金と違約金の合計金額に遅延損害金が加算された金額が支払われ、無事に解決となりました。
6.解決期間と弁護士費用の目安
ご相談の事例において、解決まで要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用は以下のとおりとなります。
解決までに要した期間と弁護士費用
●ご相談から判決確定、相手方からの支払までの期間:約2年程度
●三輪知雄法律事務所の弁護士費用(訴訟における請求額が300万円以上の場合)
・着手金:経済的利益(訴訟における請求額)の5%+9万9000円(消費税10%込)
・報酬:経済的利益(同)の10%+19万8000円(消費税10%込)
※実費、日当等は別途。
※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、個別の案件やご相談内容によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。
7.三輪知雄法律事務所の担当弁護士からのコメント
三輪知雄法律事務所
担当弁護士:三輪 知雄
出身地:名古屋市。出身大学:京都大学法科大学院。主な取扱分野は、立ち退き、使用貸借など不動産事件、相続事件、企業法務。
不動産売買契約における確定測量図の不交付に基づく契約解除、違約金請求の裁判例は散見されるところですが、隣地権者の個人的な事情と売買当事者の落ち度が相まって境界立会拒否に至っていると推測されるような事案についての裁判例はあまり見当たりませんでした。
本判決においては、境界立会拒否が判明以降、引渡期限までの間に、問題解決に向けた提案を何度か行った原告に対し、自身の責任を頑なに否定して対案すら提示しなかった被告側の態度等にも言及されていることから、問題発覚後の交渉経過も考慮されている点に特徴があるといえます。
隣地権者による境界立会拒否やこれによる契約解除及び違約金の請求の可否については、立会拒否の原因と、問題発覚後の売買当事者間の交渉経過や言動の内容を考慮して、判断をしていく必要があると考えられます。
新規事業の立ち上げ等で長い間準備をしてきたところに、隣地の境界立会拒否等で売買が流れてしまったということであれば、事業への影響は避けられません。
三輪知雄法律事務所では、このような不動産売買契約解除に伴う違約金請求のご相談については、契約締結から交渉経過まで精査して対応致します。
同様の不動産トラブルでお困りの方は、ぜひ一度、当事務所の法律相談をご利用ください。
8.三輪知雄法律事務所の不動産売買の違約金請求に強い弁護士へのお問い合わせ
三輪知雄法律事務所の「不動産売買の違約金請求に強い弁護士」へのお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間・平日 9:00~18:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
※この記事は公開日時点の法律をもとに作成しています。
※個人情報保護及び争点の理解等の観点から、結論に影響がない範囲で事案の一部を変更して記載している場合があります。